ヘソからのアプローチによる腹腔鏡手術について思うこと
外科や婦人科による腹腔鏡を使った手術について悶々としています。
昨日も来ました。そこが術後ケロイドになった患者さん。ケロイド体質でした。
そしてそこから膿(うみ)がでて感染している患者さんも多く経験します。
自分も外科研修を2年弱行いましたが、胆嚢摘出術などもヘソから入れることはありませんでした。おへその汚さを知っているからです。(ただし小児は比較的キレイなので小児の腹腔鏡手術は清掃さえすればよいかなという考えです)
おそらく、その手術を行う場合、患者さんに事前におへそを掃除するよう指導するでしょう。親切な施設は綿棒や消毒液も手渡すところもあるでしょう。しかし、どんなに掃除しても全身麻酔下に臍の奥をみると100%きれいになっている臍はありません。そこまでいじると痛いからです。
ここに非形成外科医(消化器外科、婦人科)と形成外科医の視点の違いが浮き彫りになります。
教科書的には下記になります。
1. 臍窩アプローチの利点
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整容性:瘢痕が臍の皺に隠れるため目立ちにくい。
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アクセス性:腹壁正中で左右どちらにも作業しやすい。
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患者満足度:特に若年女性で傷の見えにくさを重視される。
2. 欠点・合併症リスク
① ケロイド・肥厚性瘢痕
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臍は皮膚が薄く真皮が硬いため張力が集中しやすい。
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体質的ケロイド素因(耳介・胸部瘢痕歴など)を持つ患者では特に注意。
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感染や縫合部の炎症が引き金になることも多い。
② 感染
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臍は常在菌が多く、皮脂・角質が溜まりやすい構造。
手術創としては皮膚清潔度が低い部位に分類される。 -
清拭や消毒の徹底が難しい患者(高齢者、肥満症例)では感染率↑。
③ その他
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創離開:体位変換や腹圧で牽引されやすい。
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瘢痕の陥没変形:縫合法や真皮支持不足で臍形態が崩れる。
など。
しかし、腹腔鏡を臍以外の皮膚から挿入しても、無理な引っ張りなど行わず(皮膚に負担をかけず)手術を行い、皮膚縫合を丁寧に行い、そしてここが大事ですがアフターケアとしてテーピングやステロイド外用など指導を行えばきれいなきずあとになります。シングルポートなどで無理して少ない穴から行うことで視野を展開するために無理に引っ張ることになり、皮膚への負担は明らかに増加します。一番の目的である外科手術をしっかり行うため、皮膚の過剰牽引によるダメージは外科執刀医にとっては二の次になります。これは仕方がないことだと思います。だから無理して少ない切開で手術を行うのはどうかなと疑問に思います。また、皮膚の損傷を術後に確認しても、わざわざ損傷した皮膚を切除していねいに縫い直す外科医を見たことがありません。
自分が患者なら、ヘソから入れるのはやめてくれ、むしろ手術の目的を達成することが大事なので視野の狭くなる腹腔鏡手術よりは、しっかり開腹して手術するようお願いします。どんなに気を付けても異物残存、出血、思わぬ正常組織損傷などのリスクは開腹手術よりも低くなることはないでしょう。
昔(2006年)、王貞治さんの胃がんの手術を腹腔鏡で行うという当時先駆け的なアプローチが話題になりましたがニュース映像を見てびっくりしました。たしか腹腔鏡の穴がお腹中に6カ所くらいはあったかと思います。いまはもっと少ない穴でできると思いますが、それって結局開腹とトータルのキズの長さ、かわらんのでは??と思いました。さらに手術時間は9時間です。開腹手術の3倍程度の時間でしょうか。麻酔時間に比例して、患者の体に間違いなく負担は増えます。また長時間手術は感染率も上がります。
少なくともケロイド体質の患者さんにそのアプローチはあとあと管理が大変になるのでやめてほしい。やるならケロイドまで面倒診てほしいと思いますが外科医には形成外科学会が立ち上がって60年たっても周知されない現状では、そこまで求めることは無理だと思いますので、せめて術前にケロイドリスクは説明してほしいと思います。
しかし形成外科というのは他科のリカバーと称する「しりぬぐい」を得意ともしている診療科ですので紹介いただけるとよいのですが、、、、たいていは患者さんが主治医に相談しても取り合ってもらえず自身で調べて形成外科を受診することが少なくとも自分の経験では多いのが現状で、残念に思いますし、そこまで考えると外科医の質も上がるんだけどなー、たいして難しいことではないんだけど、、、、と思います。
最後に、人それぞれいろんな考えがあるかと思いますので、参考程度に流してください。
