できもの
粉瘤(ふんりゅう)
沖縄では「トウフヌ(ノ)カシー(アンダカシー)」で名が通っています。診断し、(県内在住の)患者さんに「これはフンリュウです」と言っても「なんですかそれ?」でも、「トウフノカシーです。」というと納得される方がほとんどで、それくらい有名です。豆腐のカスのようなものが入っていることから方言で表現されています。
「脂肪がたまったんですね」と言われる方も多くいますが脂肪ではなく皮脂腺などから排出される老廃物です。
毛穴が由来で誰にでもできうるもので一生のうちに全く経験しない人のほうが少ないと思います。院長自身も摘出歴はありますし、単純計算で2万件以上の手術歴があります。
※毛穴のない手のひら・足の裏にも同様のものができますがこれは表皮嚢腫といって、見た目や治療は同じですが発生機序がやや違います。(詳細は割愛します)
通常は診察のみですぐに診断できることが多いのですが、似ているしこりもありますので、エコー検査を行うことでほぼ確定できます。
粉瘤は毛穴の開口部が詰まることにより、皮脂腺から排出される老廃物が毛穴の奥に袋(嚢腫壁)と伴いたまってできます。
やがては皮膚の外から触れるくらいに膨らんでいきます。
ふつうは自然に治りません。だんだん大きくなったり、中にはバイ菌が入り込むことで急に腫れて痛みを伴うようになり、開口部などから膿(うみ)がでてくることがあるので、その前に受診をお勧めします。
単純に膿(うみ)がたまってそれを切開しただけでは治ったことにはなりません。袋(嚢腫壁)を取らないとまた腫れてきます。したがって、開口部を含めた切開が必要になります。開口部を含まない切開や摘出術は必ず再発します。ただし、開口部がはっきりわからない例も時々あります。その際にはやや大き目に切開摘出し根治を図っています。
炎症が強い場合や大きい場合には麻酔の効果が少なくなり痛い思いをすることがありますので、切開できる範囲での袋の切除を行い小さくなってから後日炎症が落ち着いた後に、2回目で根治術を行うことがあります。
当クリニックでは、特にお顔の小さい粉瘤などは、縫った傷あとを作らずきれいに小さく治せる形成外科KCの新城院長直伝のくりぬき法を行うことができますが、比較的大きな場合にはなるべく最小限の切開で摘出を行い、必要な分だけ縫合し早くきれいに治すことを目標としています。
※この方法は保険(皮膚皮下腫瘍摘出術)としては認められていませんので自費診療になります。
形成外科医の縫合後の仕上がりは他科の外科医の縫合と比べるとレベルが違います。理由を上げるときりがありませんが、大きく分けて、①皮膚のやさしい扱い、②適切な糸の選択や糸を通す位置、③アフターケアなどです。形成外科医は研修医のころからそういう訓練を受けております。
※形成外科医が縫合してもケロイドや肥厚性瘢痕などになることがありますが、それは体質や部位、できものの炎症などの状態などに影響されるため、他科の外科医による縫合のほうが勝るということはありません。
※くりぬき法が難しい例(あくまでも私見です)
✔ 早く治したい場合(皮膚を縫うと基本的には1週間で抜糸した時点で治癒となる(傷あとが落ち着くまでは数カ月かかります)が、くりぬき法だと、できものがあったスペースが徐々に埋まり、皮膚が閉じるまでそれ以上かかることが多い。特に大きければ大きいほど時間がかかりますので、50mm以上は通常保険手術を勧めます。)
✔ 背中(皮膚が厚く、小切開で広範囲の嚢腫壁を切除しにくい。補助切開が必要になることが多い。)
✔ 何らかの理由で施術後1日1回の軟膏処置が困難な場合。(縫わないのでしばらく排液があります。)
※エコー検査を行い、5cm以上や病変が深い場合、少しでも悪性を除外する必要がある場合や、ほかのできものの可能性を疑う場合などの場合、同じメディカルプラザ内のKAZUクリニック(整形外科)で閉所恐怖症でも安心なオープンMRI検査をお願いしたり、他の軟部腫瘍を扱う専門施設(琉球大学整形外科軟部腫瘍班及び関連施設)で検査や治療をお願いすることがあります。
予約の患者さんが優先ですが、可能な限りは直ちに対応できるように心がけております。当日初診日の手術は基本的に難しいことご了承ください。
※特に土曜日は混みあっておりますので、当日施術が難しくなっております。ご迷惑をおかけしております。
粉瘤くりぬき法に対する料金
料金表参照ください。
初診料(自費の場合は2200円)が別途かかります。
※ 大きさは皮膚の盛り上がりではなく、エコー検査による嚢腫壁の大きさで決まります。
※ 50mm以上は治癒に時間がかかることと、補助切開を行わない場合に嚢腫壁の残存のリスクが高まることなどから通常手術(切除、縫合)を勧めます。
※ 本術式を行う場合にかぎり、エコー費用も含まれます。抗生剤や鎮痛剤、軟膏などは別途費用が発生します。(通常1,500円程度です。)
ほくろ除去
(アブレーション(炭酸ガスレーザー・ノンアブレーション(切開))
アブレーション:自費診療(当クリニックでは炭酸ガスレーザー(Edge ONE)で削り取ります)
ほくろを構成する母斑細胞は、皮膚表面の表皮のみではなく、真皮深層に至ることもあります。表皮はターンオーバーとして定期的に入れ替わる場所ですが、
真皮はキズの治り(ひいては傷あと)、コラーゲン、ヒアルロン酸などによる弾力性など皮膚の重要な構成要素であり、そこまで達しているということです。
したがって、そこまで炭酸ガスレーザーでしっかり切除してしまうと傷あとに影響する可能性があり、適応を慎重に判断する必要があります。
利点: 傷跡が大きくならない。眉毛などの有毛部では毛を残せる。(いったんなくなりますが生えてきます。)
欠点: ほくろ細胞の取り残しや大きなほくろの場合は再発することがあり、追加の治療が必要になります。
※自費診療であり追加の治療も同様に費用が発生します。
※無理して一度に取りすぎる(傷あとにとって大事な創傷治癒に関わる大部分を占める真皮成分を削り過ぎる)と傷あとが目立ちます。
軟膏で10日間ほどケアし、その後は日焼け対策を行い、傷あとがおちつくまで待ちます。赤みは削る深さにもよりますが、通常2カ月くらいで薄くなりはじめ、4-6カ月で目立たなくなります。
切開法:保険適用(直径 5mm 以上の大きなホクロ除去などの場合に用いられる治療法です。)
比較的大きなほくろ(8mm以上)、青色母斑、診察で悪性が少しでも疑われる場合などはこちらの方法をまずお勧めします。
利点: どんな大きなホクロでも、ほとんどの場合 1 回で除去できます。
難点: 除去するホクロの直径の約 1.5 倍くらい直線状の傷が残ります。小さいホクロの除去にはあまり適しません。 また抜糸が必要です。
※目立たないように細いナイロンの糸で丁寧に縫合します。抜糸後はアフターケアを行うことで目立たなくなります。
※ケロイド体質の場合にはこの限りではありません。
治療と経過
ホクロ部に麻酔の注射(または麻酔クリーム塗布を30分)を行い、それぞれの方法で切除します。
術後1週間程度は処方する軟膏を塗っていただきます。
直後、ちょっとしたヒリヒリ感はあるものの、痛み止めを飲むほどではありません。(希望があれば処方します。)
翌日から患部を濡らしてシャワーを浴びても構いません。
メイクは患部のみ乾くまで、または抜糸まで控えていただきます。
アフターケアとしてのテーピングの期間は通常1-2カ月ですが、きずあとの経過により適切なアドバイスをします。
ホクロに対する料金
料金表を参照ください。
初診料(自費の場合は2200円)が別途かかります。
※炭酸ガスレーザー(アブレーション)で治療した場合、再発や取り残しに対する追加治療は同様に費用が発生します。
いぼ・フォアダイスなどに対する炭酸ガスレーザー
料金表を参照ください。
基本料(自費の場合は2200円)が別途かかります。
※基本的に初診時に対応しておりますが、10個以上となる場合は後日対応になることがあります。
※41mm以上は要相談
※麻酔クリーム(1g200円)や局所麻酔( 1ml 100円)は別当料金が発生します。
※取り残しに対する追加治療は、初回施術より半年以内及び2回まで初回料金に含まれます。
脂漏性角化症に対するアブレージョン
料金表を参照ください。
初診料(自費の場合は2200円)が別途かかります。
※2cm以上の自費診療の場合は取り残しに対する追加治療は2回まで初回料金に含まれます。保険適用の場合は含まれません。
赤ホクロ(老人性血管腫)に対するV-beamレーザー
嫌な名前のついているほくろです。残念ですが保険適用になりません。レーザーは痛みを伴いますが、短時間ですので無麻酔での施術が基本ですが痛みに敏軟な方は麻酔クリームを事前に30分ほど塗布していただいて施術を行うことも可能です(別途料金が発生します)。
同一部位にレーザーが反応してある程度紫色になるまで2-5発くらい照射します。
切らない治療ですので傷あとが目立ちませんし満足度も高いです。
比較的大きい場合(5mm以上)になるとレーザーの効果を考慮し基本的に手術を勧めます。
施術前
施術直後
1週間後
1カ月後
料金表を参照ください。
※初診の際には初診料(自費2200円)が別途かかります。
※麻酔クリームご希望の際には1カ所あたり別途200円発生します。
※同一部位は半年以内3回まで再照射補償します。
※直径5mm以上は診察の上相談ですが基本的にはメスによる切除をお勧めします。
手足のイボ 尋常性疣贅に対する各種治療
1. 尋常性疣贅とは
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ウイルス(ヒトパピローマウイルス)が皮膚に感染してできる「いぼ」です。
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手足の指や足底に多く、角質が厚く硬くなるのが特徴です。
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自然に治る場合もありますが、長引いたり数が増えることもあります。
- 他院で液体窒素を行いなかなか改善されない方が毎日のように来院されます。
2. 治療の基本方針
深部に達する病変であり、当院では、基本的には局所麻酔を行った上で、炭酸ガスレーザー治療による切除を当日行います。
さらにスピール膏(サリチル酸絆創膏)と炭酸ガスレーザーを併用することで、より効果的に治療を行っています。
多発しており痛みのないケースに対する治療オプションとして小児でも服用でき、味も飲みやすい内服薬(自費)があります。受診の際に相談ください。
再発予防として漢方薬の内服もお勧めしております。
患者さんの希望に応じて、これらを単独または併用し対応致します。
3. スピール膏+炭酸ガスレーザー治療の流れ
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前処置:スピール膏
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治療予定部位にスピール膏を3日程度貼っていただきます。
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角質をやわらかくし、レーザーの効果を高めます。
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炭酸ガスレーザー照射
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局所麻酔または表面麻酔で、いぼを蒸散させます。
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厚い角質が取れているため、根部まで効果が届きやすくなります。
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治療後のケア
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照射部位はびらん(浅い傷)になります。
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1~2週間程度でかさぶたができ、自然に脱落します。
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創部は処方する軟膏及びカットバン等で保護し、刺激を避けてください。
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再発予防:追加スピール膏
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創部が上皮化してから、残存部分にスピール膏を再度使用することがあります。
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4. 治療回数の目安
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1回で除去できることもありますが、再発や取り残しにより複数回の治療が必要になる場合があります。
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通常は4-8週間ごとに経過観察を行います。
5. 合併症・注意点
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痛み・発赤・水ぶくれ・色素沈着が出ることがあります。
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まれに瘢痕が残ることがあります。
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ウイルス性のため、完全に取りきっても再発することがあります。
6. 日常生活の注意
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傷が治るまでは、摩擦や刺激を避けてください。
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入浴・シャワーは当日から可能ですが、強くこすらないようにしてください。
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他の部位や家族にうつす可能性があるため、共用タオルや素足での床歩行は避けると安心です。
7. 費用について
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スピール膏は保険適応です。
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炭酸ガスレーザーは3個までなら保険適応ですがそれ以上の対応は原則自費診療となります(料金表参照ください)。
✅ この治療は「再発を防ぎつつ、できるだけ跡を残さない」ことを目標としています。
気になる点があれば、遠慮なくご相談ください。
皮下軟部腫瘍
脂肪腫、背中にできる弾性線維腫などが比較的よく経験されます。軟部腫瘍については最初の適切な診断が大事であり、やみくもに摘出術を行ったことで後日悪性であったことが判明し、当初から対応していれば不必要であったはずの侵襲を伴う手術が必要になったり、良くない経過をたどるリスクがあります。
それを防ぐために、MRI検査などの画像診断ができる施設かつ、軟部腫瘍を専門にした医師による診察が必要です。しわに沿った切開を行い傷あとをなるべくきれいにするという整容的な考えなどは当てはまりません。
特に、急に大きくなった、5cmを超えるようなできもの、皮下のみならず筋肉(筋膜)にも達しているものなどは注意が必要です。
そのような場合を見越して、当科としての対応は困難であり、積極的に琉球大学附属病院整形外科及びその関連施設の専門医(最も近隣は沖縄病院:火曜日午前の専門外来(要電話予約))へ紹介致しますのでご了承下さるよう宜しくお願い致します。
記事監修医師
東盛貴光 院長 |
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【経歴】 2000年 東京女子医大病院 形成外科入局 2001年 鹿児島市立病院 一般外科・小児外科研修 2011年 琉球大学病院 整形外科 手外科 2012年 東京女子医大病院 形成外科(手外科・熱傷センター責任者) 2014年 かりゆし会ハートライフ病院 形成外科 部長 2022年 貴クリニック 開設 院長就任 |
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【主な資格】 日本形成外科学会 指導医・専門医 日本レーザー医学会 指導医・専門医 日本熱傷学会 専門医 日本創傷外科学会 専門医 下肢静脈瘤に対する血管内焼灼術 指導医・専門医 |
