銀含有の被覆材はコスト、きずあと、痛みの観点で、通常被覆材に劣る可能性あり
表題の通りの内容の論文が熱傷の世界で最も権威のある「BURNS」に掲載されているのが目に留まりました。
普段から全巻熟読しているわけではありません。
私も20年ほど前、重症熱傷治療をメインに行っていたころに、海外で発表しまあまあ反響があった内容で、この雑誌に論文投稿したことがありますが、Nが少ない(十分なエビデンスを得るには症例数が少ない)という理由でrejectされました。たしか50例ほどでしたので個人的には充分と思ってました、、、、
では何例揃えればよいのか?なんてお馬鹿な質問しましたが無視されましたのでこの雑誌への投稿をあきらめた過去があります。載っていれば医学博士になれたかなーとも思いましたが、、、、
話がいきなり脱線しましたが、ここ10年くらいでしょうか。創傷被覆材(いわゆるガーゼの類です)に抗菌作用のある銀(Ag)を混ぜると感染率が下がるのは当たり前ですが、治癒などにも良い効果をもたらすとして各社がこぞって何でもかんでも銀を混ぜたものを商品開発し競争しておりました。
なのである程度の大きな傷には銀製剤を用いるのは当然と思っているところもありましたのでこの論文にはだいぶびっくりした次第です。あくまでも小児限定で浅い熱傷での検討ですが。
たしかに銀製剤の被覆材は高価なので、患者さんの負担につながる割に効果がそれほど高くない場合にはより安価で結果に差がないものを選択すべきというのが特に開業してからの考え方です。前職の総合病院にも、当時もっとも安価で使いやすい(自分で希望の大きさにカットできる、キズから出る水分をたくさん吸収してくれる)被覆材を入れさせていただきました。おそらく通常のガーゼを手作業でカットし、それをパッキングして滅菌する中央滅菌室のスタッフの人件費・材料費と比べると、だいぶ病院経営に見えないところで貢献したと自負しております。まあ誰にも気が付かれてはいないでしょうが。
感染の観点から銀製剤は有用であるということはもちろんですがキズが必ず感染するというわけでもありませんので、適材適所で患者さんの出費を抑えて効果を出せるものを各業者はどんどん開発していただきたいと願っています。