沖縄の美容医療を患者さんの立場から考える ー第6回 沖縄で美容医療を受けるという選択ー
「県外の有名クリニックの方が安心ですか?」
外来で、ときどき聞かれる質問があります。
「先生、東京や大阪の大きなクリニックの方が、やっぱり安心ですか?」 「沖縄で受けるのと、本土まで行って受けるのとでは、どっちがいいんでしょうか?」
率直にお答えします。「規模が大きいから安心」「都会だから技術が上」というのは、必ずしも正しくありません。
ここまでシリーズで見てきた通り、美容医療の質を左右するのは、施術する医師の経歴、クリニックの方針、合併症が起きたときの対応体制──こうした、規模や立地とは別の要素です。本土に大手チェーンがあるからといって、その分院が必ずしも本店と同じ質の施術を提供しているとは限りません。むしろ、医師の入れ替わりが激しいチェーンの分院では、誰が担当するかが直前まで分からないことすらあります。
最終回となる今回は、視点を変えて、「沖縄で美容医療を受ける」という選択そのものについて、お話ししたいと思います。
沖縄で施術を受けることの、本当の利点
沖縄で受けることには、本土の都市で受けることにはない、いくつかの利点があります。
利点1:アフターケアにアクセスしやすい
美容医療は、施術が終わって完結する治療ではありません。
たとえば二重整形なら、術後の腫れの経過観察、抜糸、左右差の評価。脂肪吸引なら、術後の圧迫管理、しこりの評価、必要なら追加の処置。レーザー治療なら、効果判定、追加照射の判断、副作用への対応。どの施術にも、施術後数週間から数か月の経過観察があります。
本土まで足を運んで施術を受けた場合、このアフターケアのたびに飛行機代と時間を使うことになります。実際には「面倒だから行かない」「気になることがあっても我慢する」という方が多いのが現実です。
地元で受ければ、術後何か気になったときに、すぐに相談できます。これは想像以上に大きな違いです。
ただ沖縄県は島国であり、離島からいらっしゃる方も経験しており、同様に通院困難なので、初診日に治療、施術まで希望される方が多く、また、施術できたとしても通院はできない、、、、などとおっしゃる方も多く経験しております。適切なタイミングでの通院が難しいためでの最善の治療ができない可能性も出てきます。ましてや合併症を生じた場合、その覚悟までできているのか疑問に感じるケースもあります。そのような方が施術を受けるというのはどういうことかよく考える機会になれ幸いです。
利点2:合併症対応がスムーズ
前回お話しした通り、美容医療には合併症のリスクがあります。
本土のクリニックで施術を受けた患者さんが、沖縄に戻ってから合併症を発症した場合、施術を行ったクリニックには簡単に戻れません。沖縄県内で対応してくれる医療機関を探すことになりますが、自院で起きた合併症ではないため、対応に時間がかかったり、責任の所在が曖昧になったりすることがあります。
地元で施術を受けていれば、トラブルが起きたとき、基本的には施術した医師がそのまま責任を持って対応します。これは医療として、もっとも基本的な形です。また想定外の対応が困難な合併症でも、施術内容を知っていれば適切な医療機関医紹介することはできます。
利点3:長期的な関係を築ける
美容医療は、一度で終わる治療ばかりではありません。
しみのレーザー治療を受けて、数年後に新しいしみが出てきた。注入治療を受けて、効果が薄れてきたので追加したい。年齢を重ねるにつれて、別の悩みが出てきた。こうしたとき、あなたの肌や顔のことを長年見てきた医師に相談できるかどうかは、判断の質に直結します。
「以前はこの程度でしたから、変化はこのくらいですね」「あの時の薬剤の効きが良かったので、今回も同じ製剤にしましょう」──これは、初めて会った医師には言えないことです。
「地元のクリニック」の選び方
沖縄県内には、いくつもの美容クリニック・形成外科クリニックがあります。県内で受けるとしても、どこを選ぶかは大切です。シリーズを通してお話ししてきた視点を、ここで改めて整理します。
医師の経歴を確認する
院長や担当医師がどんなトレーニングを経てきたかを、ホームページで確認してください。形成外科専門医、皮膚科専門医、美容外科専門医(JSAPS)。これらの資格は、最低限の研修を経たことを示す指標になります。
ただ、幸いにして、県内の形成外科専門医の開業されている自分以外の先生方はとても優秀です。JSAPSの中で全国90名ほどの評議員の中に、4名も県内所属の先生がいらっしゃいますし、その中でより中心となる20名の理事のなかに3名もいらっしゃいます(2026年5月現在)。
年に2回ほど沖縄県形成外科研究会で顔を合わせ、発表会など行っておりますが、意見も鋭く、レベルも高いもので、東京にいた時のディスカッションと何らそん色はありません。
価格表示を確認する
施術料金、薬剤名、追加料金の有無が明示されているかを見てください。「お問い合わせください」となっているクリニックは、患者さんごとに価格が変動する仕組みの可能性があります。
カウンセリングを体験する
実際に相談に行ってみて、医師が直接話を聞いてくれるか、即日契約を促されないか、合併症の説明があるかを確認してください。納得できなければ、契約せずに帰る。これが基本です。
地域での評判を見る
沖縄は人と人との距離が近い土地柄です。地域でそのクリニックがどう見られているか、長年通っている人がいるか、(ネットではなく直接の)口コミは正直に出やすい環境です。広告だけで判断せず、身近な人の話も参考にしてください。ネットでの高すぎる口コミ評価は、関係者やお金を払って専門業者に依頼している可能性があります。
私が、この仕事を続けている理由
シリーズの最後に、少し個人的なことをお話しさせてください。
私は東京女子医科大学の形成外科で研修を受け、形成外科専門医・指導医の資格を取得し、その後、沖縄に戻って西原町で総合病院の形成外科部長を10年ほど勤め、貴クリニックを開きました。形成外科、美容外科、美容皮膚科、フットケアまで、診療範囲は普通の形成外科専門医より広めです。
なぜ沖縄で開業したかというと、答えは単純で、ここが私の地元だからです。
ただ、それだけではありません。沖縄には、形成外科の専門的な医療を受けたいときの選択肢が、都市部に比べて限られているという現実があります。やけど、顔面骨折、皮膚腫瘍、術後の瘢痕、糖尿病で治らない傷──こうした「治癒の難しい問題」を扱うのが形成外科の仕事ですが、これらに対応できる施設は県内でそう多くありません。
美容医療も、私にとってはその延長線上にあります。「皮膚と組織を扱う」という意味で、形成外科の仕事と地続きです。
クリニックでは、診療の方針として、いくつかのことを決めています。
- すべての治療方針を医師が決定すること
- 即日契約を勧めないこと
- 料金体系を明示すること
- 合併症の説明をきちんとすること
これは、シリーズで「望ましい」と書いてきたことと、ほぼ同じです。ただ、自分のクリニックの宣伝をするためにこのシリーズを書いたわけではありません。むしろ逆で、「医療として当たり前のこと」が、いつの間にか業界の中で当たり前ではなくなってきている。そのことへの違和感が、シリーズの出発点でした。
「地元で長く」という、ささやかな提案
クリニックには、前職の病院時代からついてきていただき、長年通ってくださる患者さんがいます。
10年前にしみの治療で来た方が、今度はお子さんの傷の相談に来てくださる。ご両親のフットケアでお越しになる方が、ご自身のシワの相談もしてくださる。家族3世代で来てくださるご家庭もあります。
これが、地元のクリニックの形だと思っています。派手ではないし、SNSでバズる施術ばかりを提供しているわけでもありません。ただ、長く通っていただける関係を、ひとりひとりの患者さんと築いていく。それが、私たちがやろうとしていることです。
私自身も、地元で暮らし、地元で家族と生活しています。診療の合間に港で釣りをしたり、週に2回程度沖縄空手の道場とフィットネスジムに通い健康増進を図り、両親の様子を見に行ったり、息子と仕事の話をしたりしながら、ここで暮らしています。
患者さんとは、スーパーで会うこともあれば、子どもの行事で顔を合わせることもあります。だからこそ、無責任な施術はできません。地元で続けていくということは、長期的な信頼の上にしか成り立たないのです。
シリーズを締めくくるにあたって
全6回、お読みいただきありがとうございました。
このシリーズで伝えたかったのは、ひとつのクリニックを宣伝することではなく、患者さんが自分自身で判断できるようになるための、考え方の道具です。
第1回で、美容医療をめぐる相談件数が急増している現状をお伝えしました。 第2回で、形成外科専門医という資格の意味と、医師の経歴を見る視点をお話ししました。 第3回で、カウンセリングで起きていることと、その場での判断の仕方をお伝えしました。 第4回で、価格の仕組みと、安さや高さの裏にあるものを解説しました。 第5回で、合併症が起きたときの現実と、確認しておくべきことを共有しました。
これらの視点が、皆さんがこれから美容医療と関わっていくうえで、少しでも役に立てば嬉しいです。
美容医療は、人生を豊かにしてくれる可能性を持った医療です。同時に、選び方を間違えると、心身に大きな負担を残す可能性も持っています。だからこそ、納得して、信頼できる医師のもとで、自分の意思で選んでいただきたい。
そして、もし沖縄で美容医療を受けることを検討されているなら、いつでも貴クリニックに相談にお越しください。施術を勧めるためではなく、まず話を聞くために。それが、私たちのドアの開け方です。
長いシリーズにお付き合いいただき、ありがとうございました。
美容医療を正しく選ぶための連載内容
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沖縄の美容医療の現状
今回のテーマである市場の変化と現状について。 -
形成外科専門医の資格
医師選びの客観的な指標となる資格の意味。 -
カウンセリングの見極め方
即日契約や不安を煽る話法、見積りのチェックポイント。 -
自由診療の価格設定
モニター価格や極端に安い料金設定の仕組み。 -
トラブル時の責任と対応
万一の合併症が起きた際の修正と現実。 -
沖縄で受ける美容医療
地元で長く通える信頼関係の構築について。今回。
貴クリニック 院長 東盛貴光
形成外科専門医・形成外科指導医
このブログは毎月8日、18日、28日に更新します
