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沖縄の美容医療を患者さんの立場から考える ー第3回 カウンセリングで見抜くクリニックの質ー

[2026.06.18]
「カウンセリングだけのつもりだったのに」

国民生活センターには、毎年こんな相談が数多く寄せられています。

鼻先を尖らせる施術を検討して、SNSで見つけたクリニックの予約を取った。「カウンセリングだけ」のつもりだったが、来院すると個室に通され、カウンセラーから「メッシュを入れると鼻筋が通る」と勧められた。「考えます」と言ったが、「今やった方がいい」「私も施術を受けた、大丈夫」と強く勧誘され、1時間半ほど話を聞かされた。その後、医師の説明を受けて、合計約100万円の契約を結んでしまった。クレジットカード2枚で決済し、そのまま施術を受けたが、鼻が腫れてしまった。元に戻してほしい。

これは2023年に国民生活センターが公表した、ある相談者の声です。同じような事例は他にも数えきれないほどあります。

こんなこと書いている私自身も、医療ではありませんが、右も左もわからない若き日に東京で5時間くらい軟禁され、意味のない商品を交わされた経験があり、勉強になった記憶があります。この事も国民生活センターに相談し解決に至りました。

なぜこういうことが起きるのか。今回は、カウンセリングの場で何が起きているのか、その仕組みと、患者さん自身が見抜くための視点をお伝えします。

カウンセリングは「営業の最前線」になっている

知っておいていただきたいのは、多くのクリニックでカウンセリングが「営業活動の最前線」として機能している、という事実です。

これ自体は違法ではありません。自由診療は患者さんの納得と契約に基づいて行われるものですから、説明し、提案し、契約に至るまでのプロセスは商行為に近い側面を持ちます。

ただ、ここに構造的な問題が潜んでいます。

多くの大手チェーンクリニックでは、カウンセリングを行うのは医師ではなく「カウンセラー」と呼ばれる職種です。彼らの多くは医療職ではなく、営業職として採用されています。給与体系も、契約金額に応じたインセンティブが組み込まれていることが珍しくありません。

つまり、目の前に座っている「カウンセラー」は、患者さんの悩みを聞く役割と、契約を取る役割の、両方を同時に担っているわけです。利益相反、と言ってもいい構造です。

そして、契約が決まったあと、施術直前に短い時間だけ医師が現れて、簡単な説明をして同意書にサインをもらう──こういう流れになっているクリニックも少なくありません。

当院でもカウンセラー的なスタッフはおりますが、治療方針はすべて医師が決定しております。その中で選択肢を患者さんにかみ砕いて医師の治療方針を説明し、その費用を明瞭に提示し検討していただくように心がけております。

「カウンセラー」という名称を変えようと現在検討中です。何か良い案があれば募集します。

 

患者さんが「危ない」と感じるべきサイン

具体的に、カウンセリングの場で出てくる典型的なパターンを挙げます。これらは、国民生活センターの相談事例に繰り返し登場するものです。

サイン1:「今日契約すれば安くなる」

「カウンセリング当日に契約すると割引します」「モニター価格は今日だけです」──こうした即日契約の誘導は、特に注意が必要です。

冷静に考えれば、自分の身体に手を加える判断を、その場で即決させようとすること自体が、医療として不自然です。重要な選択ほど、時間を置いて、ご家族にも相談して決めるのが本来の姿です。

国民生活センターには、こんな事例も寄せられています。

美容外科に包茎手術のカウンセリングに行くと、「重症であり、今契約をすれば安くなる」と契約を急がされ、当日手術を受けた。焦って高額な契約をしてしまったので、支払いたくない。

「今だけ」「今日だけ」と言われたら、いったん帰る。これだけで防げるトラブルが、相当数あります。

サイン2:不安を煽る話法

「このまま放置すると、もっとひどくなりますよ」 「年齢を重ねると取り返しがつかなくなります」 「マスクを外す生活が戻ったら、周りに気づかれてしまいます」

こういった、不安を強調する話し方には注意が必要です。

美容医療は、機能を回復するための医療(保険診療)とは異なり、「やらなくても日常生活は送れる」治療です。だからこそ、患者さんが「やりたい」と思うように仕向けるためには、何らかの動機づけが必要になります。その手段として、不安を煽る話法が使われやすいのです。

冷静になって判断するべきは、「いまの自分は本当に困っているのか」「困っているとして、それは医療で解決するべきことなのか」。この問いかけを忘れないでください。

サイン3:「メッシュ」「最新の○○」など、聞き慣れない名称

カウンセリングの場で、聞いたことのない名称の施術を勧められたら、立ち止まってください。

「私たちのクリニックでしかできない」「特許を取った独自の○○法」といった説明には、注意が必要です。本当に確立された施術であれば、複数の学会で議論され、複数の施設で行われ、エビデンス(臨床試験のデータ)が公開されているはずです。

「他では受けられない」というのは、裏を返せば「広く検証されていない」ということでもあります。

冒頭の鼻のメッシュ事例も、これに該当します。鼻の中に異物を入れる施術には、感染、移動、突出、皮膚壊死といったリスクが知られており、専門医の間では慎重な意見が多い手技です。

サイン4:見積書の項目が曖昧

見積書を見せられたら、項目を確認してください。

  • 手術料の内訳が明示されているか
  • 麻酔料は別途か、含まれているか
  • 術後の通院・抜糸代は含まれているか
  • 万一の修正が必要になった場合の費用はどうなるか
  • アフターケアの薬代は含まれているか

「○○術一式 50万円」とだけ書かれていて、内訳が不明な見積書は要注意です。あとから「これは別料金です」と追加請求される事例が報告されています。

※ 当クリニックでは手術を行う予約の際には費用の詳細は説明し書面でお渡ししておりますが見積もり書は発行しておりません。

 手術において、未確定の患者さんに「見積書」を交付する法的義務はそもそもありませんし、当クリニックは医療を扱っており、営業色を出すことに関する抵抗感、相見積もりに使われたくない(このクリニックではいくらだったからもっと安くできるのではと他院で交渉に使われるなど)、今の世界情勢からもお分かりの通り、状況で金額が変わり得る、といった理由があります。

サイン5:契約の前に医師と会わせてもらえない

これは、もっとも重要なサインかもしれません。

施術を行う医師と、契約前にきちんと話す時間を取ってもらえるか。「契約後に医師がご説明します」というクリニックは、構造的に「カウンセラーが契約を取り、医師は手を動かすだけ」という分業になっている可能性が高いです。

自分の身体に手を加える医師と、契約前に会って、目を見て話す。これは患者さんとして当然の権利です。

「医療ローン」「クレジット決済」への注意

カウンセリングの最後で、支払い方法の話になります。ここでも注意点があります。

高額な施術ほど、「医療ローン」が提案されます。月々の支払いを聞くと「これくらいなら」と思えてしまう仕組みです。ところが、ローンは契約成立後の解約が極めて難しく、施術に納得できなかった場合でも支払い続けなければならないケースが大半です。

国民生活センターの事例には、「クレジットカード2枚で決済し、そのまま施術を受けた」という記述が頻繁に登場します。複数のカードに分けて決済するのは、限度額を超える金額を支払うため。つまり、その時点で「冷静な判断ができていない可能性が高い金額」を契約している、というサインでもあります。

事前に「いくらまでなら出してもよいか」を自分で決めておく。それを超える提案をされたら、その場では契約しない。これだけで、防げるトラブルが多くあります。

クーリングオフが使える場合があります

2017年12月の特定商取引法改正により、一定の美容医療サービスについては、クーリングオフが適用できるようになりました。

対象になるのは、契約期間が1か月を超え、契約金額が5万円を超える、以下のような施術です。

  • 脱毛、にきび・しみ・そばかす・ほくろなどの除去
  • 肌のしわ・たるみ取り
  • 脂肪の溶解
  • 歯のホワイトニング

これらに該当する契約は、契約書面を受け取った日から8日以内であれば、書面で通知することで無条件に解約できます。

「契約してしまった、もう手遅れだ」と諦める前に、まずはお住まいの市町村の消費生活センター、または消費者ホットライン「188(いやや!)」に相談してみてください。

カウンセリングは「断る練習」をしていく場所

最後に、これからカウンセリングを受ける方への、率直な提案です。

カウンセリングは、契約をする場所ではありません。情報を集め、医師と相性を確認し、自宅に持ち帰って考える材料を得る場所です。

そのうえで、行く前に、ご自身の中で次の3つを決めておいてください。

  1. 今日は絶対に契約しない、と決めてから行く
  2. 予算の上限を決めてから行く
  3. どんなに勧められても断ると決めてから行く

不思議なもので、「今日は決めない」と決めてから行くと、カウンセリングで聞く話の中身が冷静に聞こえてきます。本当に必要な施術なら、家で考えても結論は変わりません。家で考えて「やめておこう」と思える施術は、もともとカウンセリングの圧で契約させられかけていた、ということです。

良いクリニックは、その場で契約させようとしません

裏返して言えば、信頼できるクリニックほど、その場で契約させようとはしないものです。

「今日決めなくていいですよ」「いったん持ち帰って、ご家族とも相談してみてください」「他のクリニックでも話を聞いてみてから決めても、まったく問題ありません」──こう言ってくれる医師に出会えたら、それは安心材料のひとつです。

ただ、皆いそがしい社会生活で時間を割いて受診され、すでに決心し当日の施術を希望される患者さんも少なくありませんので、その場合にはよく説明し納得していただいたうえで当日施術を行うこともあります。

医療は、患者さんが納得して、自分の意思で選ぶものです。納得を急かす仕組みは、医療の本来の姿ではありません。

次回は、自由診療の価格そのものに踏み込みます。なぜ同じような施術でも、クリニックによって価格が大きく違うのか。極端に安い価格や「モニター募集」には、どんな仕組みがあるのか。値段の裏側にあるものを、お話しします。

美容医療を正しく選ぶための連載内容

  1. 沖縄の美容医療の現状
    今回のテーマである市場の変化と現状について。
  2. 形成外科専門医の資格
    医師選びの客観的な指標となる資格の意味。
  3. カウンセリングの見極め方
    即日契約や不安を煽る話法、見積りのチェックポイント。今回。
  4. 自由診療の価格設定
    モニター価格や極端に安い料金設定の仕組み。
  5. トラブル時の責任と対応
    万一の合併症が起きた際の修正と現実。
  6. 沖縄で受ける美容医療
    地元で長く通える信頼関係の構築について。

貴クリニック 院長 東盛貴光
形成外科専門医・形成外科指導医

このブログは毎月8日、18日、28日に更新します

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